上達の指南

藤沢一就八段の「子どもの碁に学ぶことあり」

(4)夏休みは飛躍のチャンス

(寄稿連載 2009/10/27読売新聞掲載)

 夏休みは子どもたちが強くなる絶好のチャンスです。集中力が顕著に現れます。したがって夏休みの間、教室は毎日開いて、私もほとんど出ています。休み前に13路盤クラスだった男の子が、休みの終わりには7級になっていた例があります。毎日教室に通い、その集中力は立派なものでした。

 【テーマ図】 黒は10代後半の女子、Aさん、白は同年代のS君。教室では最高段クラスです。
 白16のハサミは元気はいいが打ち過ぎで、黒17とコスまれ、サバキが不自由です。

 【1図】 ここでは白1、3のツケ切りがよく打たれるサバキの筋です。黒4の引きに白5と抱え、7と抜けば白は治まり形です。テーマ図に戻り、白20のケイマは虫が良すぎて危険です。黒21、23とおとなしく受けてくれ、何事もありませんでしたが――。

 【2図】 黒が1、3と実力行使したら白は困り、黒7まで白が持ちそうにありません。女子は手堅さゆえに、果敢に戦うことを避ける傾向があります。
 しかし黒39の肩ツキは鋭いねらいで、黒43まで取り込んだのは大きな戦果でした。

 【3図】 白48は考えた手。これを白1の飛びでは平凡で、黒2、4と飛ばれては面白くありません。

 【4図】 黒49と備えた手では、黒1とケイマにいきたいのですが、白2以下の反撃が厳しく、この戦いは黒自信が持てないでしょう。

(おわり)

●メモ● 藤沢八段の父、秀行名誉棋聖が5月に亡くなって、早5か月余り。7月には都内のホテルでファンら900人が集い「偲(しの)ぶ会」が行われ、10月13日には故人の遺志により山口県の周防灘で散骨が行われた。一周忌に向け記念碑の建立計画が進んでおり、募金活動も始まっている。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】