上達の指南
(1)迫力満点の眼取りに歓声
(寄稿連載 2008/09/01読売新聞掲載) ◆準々決勝 (白)九段・李 世ドル (黒)九段・古 力
(選 倉橋正行九段)
第21回世界囲碁選手権・富士通杯の決勝は7月7日、東京・日本棋院で行われ、中国代表の古力九段が韓国代表の李昌鎬九段を破って初優勝した。中国代表の優勝は、第8回の馬暁春九段以来、13年ぶり、2人目。古九段は韓国勢の11連覇を阻んだ。
6月7日、中国北京市で打たれた準々決勝4局、7月5日、日本棋院での準決勝2局はいずれも好局ぞろいで、その中から、北京に解説役で同行した倉橋正行九段に「名場面」を4局選んでもらってお届けする。
今回は、韓国と中国のランキング1位同士の対戦で、屈指の好カード。風変わりな布石から李が積極的に仕掛け、右辺で実利を稼いだ。黒は中央の白をかなりいじめないと、元が取れない。
【名場面】 黒1と当て、白2と抜いたところでクライマックスが訪れる。
【変化図】 ここで黒1とつぎ、白2と生きさせるのはさっぱりで、即負けのコースになる。
【実戦図】 黒1と突き当たった瞬間、中国の検討陣から大きな歓声が上がった。「やった!」という感じだった。迫力満点の眼取りである。
白6に、黒7のツケが「もたれ攻めのお手本のよう」と倉橋九段をうならせた。白は相手をできず、黒13となって優勢を築いた。60手余り後、古はこの白の大石を召し捕ってしまう。
(赤松正弘)
●メモ● 倉橋九段は関西棋院所属。大阪府出身で36歳。師は藤沢秀行名誉棋聖と父の正蔵八段。関山利道九段(36)は母の兄・利夫九段(故人)の二男でいとこ、橋本昌二九段は母の姉の夫で義理のおじにあたる。関山利一初代本因坊(故人)を筆頭に囲碁一族。