上達の指南

第21回世界囲碁選手権富士通名場面集

(2)白 緩急自在の打ち回し

(寄稿連載 2008/09/08読売新聞掲載)

 ◆準々決勝 (白)九段・常 昊(中国) (黒)九段・朴 永訓(韓国)
  (選 倉橋正行九段)

 朴は第17回と第20回の優勝者で、李世ドル九段、李昌鎬九段と並び韓国の「三強」を形成している。今回、中国の古力九段が優勝するまでは、韓国の三強は「世界の三強」と言い換えてもいいぐらいだった。
 常は第11回と第13回の準優勝者。初優勝を強く意識してこの対局に臨んだものと想像された。

 【名場面】 右辺の白がどう働くかがポイントになっている。厚みとなれば白相当だが、攻められたりすると苦しくなる。黒1から3と白の背後を脅かした。

 【変化図】 ここで白1とくつろげるのは、黒2、4のツケ伸びから、白5に黒6と切られる。白7には黒8と妥協し、黒10の好点に回る。これは白が不満で、自信が持てないという。

 【実戦図】 白1と三々に入り、様子を見たのが絶妙のタイミング。今なら、黒2と遮るしかない。そこで白3と打ち、黒8に、白9から17と生きた。黒20は白Aのツメが厳しいから省けない。
 白21がたまらない好点。白5が活力を残しており、白の楽しみな碁になった。同行した林海峰名誉天元は「常さんはうまく打っているね」とほめていた。
 倉橋九段は「前局の直線的な碁とは対照的に緩急自在の印象で、白のほれぼれするような打ち回しが目立ちました。このように打ちたいものですね」。
(赤松正弘)

●メモ● 倉橋九段は8月5、6の両日、東京・日本棋院で行われた第29回少年少女囲碁大会の全国大会で、小中学生の決勝戦の大盤解説を担当した。聞き手は万波奈穂初段で、23日にNHKで放映される予定。倉橋九段は第5回の小学生優勝者。この時の2位は坂井秀至七段、3位は矢田直己九段。

【名場面】
【変化図】
【実戦図】