上達の指南
(1)試験碁に勝ち14歳で来日
(寄稿連載 2009/03/09読売新聞掲載) シンガポールで行われた国際棋戦の審判長を務め、昨日、帰国したところです。
5月で95歳になりますが、囲碁のお陰で充実した毎日を過ごしています。来日して、はや80年になりますが、瀬越憲作先生(元日本棋院理事長)への入門が決まり、来日前、兄弟子となる橋本宇太郎四段(当時)がわざわざ北京に来られ、入門試験碁を打って下さいました。
本局がその一局です。
「実戦譜1」の白1の二間飛びは双方の勢力の要点で、黒4の飛びを予防しながら、もし黒イと受けると、白ロに先着しようとの意図。橋本さんの才気を感じます。私も黒2とあえて下辺に先着しました。となると白3は当然の攻撃ですが、私は黒4と強く反発しました。黒4で「参考図1」のような打ち方は考えられません。
勢い実戦譜の白5、黒6と激しくなりました。白5で「参考図2」の白2では、黒3と割り込まれて形が崩れます。
「実戦譜2」の白7からは騎虎の勢いで、白23までは一本道です。ここで黒24がしゃれた様子見で、白25かイかと聞きました。黒26まで一段落です。この結果、白は実利を得ましたが、右辺の4子と上辺の1子が薄くなりました。結局、黒6目勝ちとなりました。
来日はこの対局の翌月。14歳でした。
(構成・牛力力)
●メモ● 呉師は今年1月、神奈川県平塚市で行われた第33期棋聖戦七番勝負第2局の1日目午後、対局会場を訪れた。山下敬吾棋聖と挑戦者、依田紀基九段の棋譜を並べ、石田芳夫立会人らと検討、周囲をうならせる鋭い指摘を発した。碁盤の前に座ると、まだまだ若い。
白:四段・橋本宇太郎 黒:呉清源
(1928年9月)