上達の指南
(3)白の向かい小目で3連勝
(寄稿連載 2011/08/09読売新聞掲載) この三番碁の経緯については前回述べましたが、第1局、第2局とも私が勝って本局を迎えました。先相先の手割りでしたので、本局は高川さんの黒番コミなしの対局でした。
この三番碁では、第1局が椅子席の対局で、当時としては珍しい画期的な試みでしたが、第2局からは従来通り座敷で座って打ちました。
「実戦図」の白12までは、藤沢庫之助九段との第2次打ち込み十番碁の第7局とまったく同じ手順でした。白の向かい小目は私の愛用の布石です。
黒1、3、5に対して、白6と大ゲイマにかかりました。イのケイマですと、黒8のハサミが厳しいからです。黒7と先手でひと隅を獲得できるので、黒が有利と思われますが、「参考図1」のように、黒はそれを決めずに1と左上隅に展開する方がより良いのではないかと思います。要するに白2と直ちに三々につけてくるのは、以下、黒19までのように、黒が足早で効率がよいことは明らかです。
さらに「実戦図」の黒9では、「参考図2」のように1と大ゲイマがかりに打つ方が分かりやすかったと思います。
「実戦図」の白12となると、戦いは左辺からでしょうから、白石が多い分、白が有利と言えましょう。激しい碁でしたが、私が勝って、この三番碁は3連勝しました。高川さんとの三番碁は計7回打ち、11連勝したのも懐かしい思い出です。
(構成・牛力力)
●メモ● 藤沢庫之助九段との第2次打ち込み十番碁第7局は、この三番碁第3局の前年に打たれた。同じ十番碁第1局も同様の布石。観戦記は「(この)布石は呉氏の最近の碁に一体何べんぐらい出来ただろうか。今やこの呉清源布石はテコでも動かないようである」と記している。
写真=碁盤に「清福」と揮毫(きごう)する呉
呉・高川三番碁第3局
白 九段・呉清源
黒 本因坊・高川格
(1953年)