上達の指南
(3)実利を取られ攻められる
(寄稿連載 2005/10/24読売新聞掲載) 棋聖戦回顧の3回目は、今年の防衛戦の第3局です。
挑戦者の結城聡九段は、すこぶる調子がよく満を持して挑戦してこられました。一方私は前年の棋聖戦第4局あたりから、大変調子が悪くなっていました。
ただし、結城さんとは比較的相性がよかったのです。相性がいい人とは途中で我慢が利きますが、逆に相性が悪いと無理をしがちで、結果もよくないことが多いものです。
第1局は立ち上がりから力碁になり、結城さん好みの展開になってしまいました。また第2局も結城さんの好きな戦いの碁で、結城さんの独り舞台の様相でした。
北海道函館市での第3局は、ともかく穏やかな碁を目指しました。
【実戦図】 左下、左上と平穏な分かれとなり、これからの碁です。
白1のツケに黒2、4から6の伸びは予想された強手でした。白7のハイはよいとして、白9とツケたため黒10と出られ、黒18までとなりました。
この後、白イの押しに黒ロと殴り込まれ、戦いを避けるための策が、またまた好きではない戦いを誘ってしまいました。
【1図】 これは山城宏九段の説ですが、実戦図の白9ツケでは、白1ともう一本ハイ、さらに3、5とハッて穏やかに生き、白イの挟みツケを狙うのがよかったようです。黒はロとかハとやってくるでしょうが、この方が白としてはよかったようです。
【2図】 なお、実戦図の白7ハイで、すぐに白1とツケると、今度は黒2のツギとなります。これには白は3、5と後手で生きることになり面白くありません。
実戦は黒に実利を取られ、上辺に打ち込んできた黒を不本意ながら攻めさせられることになりました。