上達の指南
(4)不透明でなく手厚い碁に
(寄稿連載 2005/10/31読売新聞掲載) 棋聖戦回顧の最終回は、結城聡九段との今年の防衛戦第6局です。
2勝2敗で迎えた第5局は、私の地元の三重県志摩市で打ちましたが、ほぼ完敗でした。地元で一番悪い碁を打ってしまったのです。
前期の第7局と同じく、悪い流れで第6局を迎えました。多分だれもが結城さん有利と見ていたでしょう。
私は、不透明な碁ではなく自分本来の手厚い碁に戻そう、という心境で臨みました。最近、穏やかな道と不透明な道を選択する局面で、不透明を選ぶことが多くなってきています。
対局相手が強いと、穏やかに結論を先延ばしにして、ヨセで勝つという手法が難しくなってきているのです。
【実戦図】 黒1とそったのが、目指した厚い手です。白2に黒3とあくまでも厚く行きました。
【1図】 黒3では、黒1の三々入りも大きな手ですが、これはあまり考えませんでした。白2以下黒5のとき白6、8と押され、白10となると、これもまた不透明なことになります。
実戦図に戻り、白4締まりに手厚く黒5とこすみましたが、黒9の飛びでは打つ手に困りました。黒9は「この一手」ではなく、悩んだ末の一手でした。
【2図】 黒9で、黒1のハイは、白2から4と運ばれるのが嫌でした。白2で3と伸びれば黒イと迫り、白ロに黒ハで調子がつくのですが――。
本局を勝ち、最終局へ。最終局までくると、一つの責任を果たせた、という気持ちになりました。(おわり)