上達の指南
(1)手抜きして大場へ展開
(寄稿連載 2009/04/07読売新聞掲載) 定石とはひとつの型を意味します。一方が非常に有利になる変化は定石とはいいません。元来、一流棋士たちが平素の研究や実戦で試み、相手もその場に臨んで手段を尽くしてでき上がったものです。定石は先輩たちの苦労のたまものですが、?をつけたくなるものもまじっています。
今回から4回にわたり、定石とされているものの中にも、僕が「おかしいのではないか」と疑問を感じている型を取り上げ、解説します。
【テーマ図】白6とツケられた局面。よく見られる布石です。
【定石?】黒1のハネから5のケイマ(Aも有力)までが定石とされ、互角の型と書いてあるけれど、この局面では黒が割を食って、よくないと思います。
【変化図1】形を変えて見てみますと、白の一間高ガカリに対し、黒1とケイマに受けたのと同じです。黒1は消極的な感じがしませんか。
【変化図2】僕はこの布石では白のツケに手を抜くのが一番いいと信じています。テーマ図、黒イと三連星を占めることをおすすめします。白1から3に、黒2子は軽く見て黒4と大場の開きに回ります。白Aの打ち込みは恐れません。
【変化図3】白1には、黒2、4のツケノビが常用の手段です。白7以下、11の時、黒12、14の切り下がりが絶好の捨て石になります。黒16のツギに回り、思い通りの打ちやすい局面に導きました。
●メモ● 彦坂九段は日本棋院中部総本部所属。1962年生まれ、47歳。名古屋市出身。酒井利雄八段門下。76年入段、92年九段。棋聖戦五段戦、六段戦で優勝。棋聖戦リーグに1回、名人戦リーグに2回、本因坊戦リーグに1回入っている。一昨年、800勝達成。