上達の指南

彦坂直人九段の「この定石ほんとかな?」

(3)秀策流も時代が変える

(寄稿連載 2009/04/21読売新聞掲載)

 定石にははやりすたれがあり、当然、時代とともに変化していきます。勝ちまくっている人が打てば人気になるでしょうし、コミ、持ち時間など、対局条件も変化の要因になります。

 【テーマ図】白6までは永久不滅の秀策流です。黒7の二間高バサミに、白8といっぱいに挟み返し、黒9とツケました。すでに現代碁の激しさが表れています。

 【定石?】白1、3のハネノビから、黒4の突き当たりに白5とはい込み、黒6の曲げまで。何年か前までは、この型が平然と打たれていましたが、白がよくないし、勝率もかなり悪いはずです。何といっても、黒が厚いですね。

 【変化図1】改良型ともいえるのが、白1と伸び、黒2のツギに3のハイコミです。これは昔から打たれていた手でもあり、呉清源先生の碁でも何局か出てきます。呉先生の打ち碁は、発想が厳しく、いつ並べても勉強になりますね。黒4の伸びなら白5と開きます。黒6と飛び、白7から11と押さえ込んで13まで、常識的な進行といえるでしょう。

 【変化図2】黒1、3のハネノビも考えられます。白4から黒11まではほぼ一本道で、白は12と開くことになります。

 【変化図3】黒1の二段バネも有力です。白2、4のハネツギから6、8の切り取りは絶対で、黒11のハサミになりそうです。ただし白も将来、上方の黒に対し、反撃を狙えるかもしれません。

●メモ● 彦坂九段はインターネットで対局する幽玄杯リーグに出場、小林光一、小林覚、王立誠九段らとともに若手に胸を貸している。優勝は第1期が黄翊祖七段、第2期が井山裕太八段。彦坂九段は通算8勝10敗。少し胸を出しすぎの感がしないでもない。

【テーマ図】
【定石?】】
【変化図1】
【変化図2】
【変化図3】