上達の指南
(2)安易な三々入りは不満
(寄稿連載 2009/04/14読売新聞掲載) 囲碁を覚えるのに定石から入るのは悪いことではありませんが、頼りすぎるのは考えものです。なぜなら、本に書いていない手を打たれた時に、困ってしまうからです。強くなるにつれ、自分で考える習慣を身につけ、その場その場に応じて自由自在な発想ができるよう、柔らかな頭を保っていたいものですね。
【テーマ図】黒5に白6とかかり、黒7の両ガカリに白8、10とツケノビました。いつでもどこでも見かける布石です。
【定石?】黒1と三々に入り、白2と押さえ、黒3と渡って白4の切りまでが定石とものの本によく書いてありますが、そうでしょうか。僕は部分的には白が厚く、右下隅のカカリがいい位置にあるので、白がはっきりいいと見ています。白Aと詰めてBの置きを見るのも有力ですし、Cと伸びて利かす場合もありそうですね。
【変化図1】黒1とついで頑張るべきでしょう。白2に黒3とはね、白4のコスミに黒5とかけつぎます。白6の曲がりは攻防の要点。ここから競り合いになりますが、互角の戦いが予想されます。蛇足になりますが、白4でAと押さえ、黒B、白C、黒Dと渡られるのは、黒の実利が大きく、白が甘いとされています。
【変化図2】黒の三々入りでは、黒1のトビツケも有力でしょう。白2、4のワリツギ以下、6の当てから8と曲げ、10の二間バサミなら、双方不満のない穏やかな進行です。
●メモ● 彦坂九段は1998年、十段戦五番勝負で加藤正夫十段を3勝2敗で破り、初の七大タイトルを獲得した。90年、羽根泰正九段が王座となり、中部総本部に初タイトルをもたらして以来、二つ目となる貴重な勝利だった。二人の後には羽根直樹九段(天元、棋聖、本因坊)が続いている。