上達の指南
(2)最善の一手を絞り込む
(寄稿連載 2015/09/01読売新聞掲載) 棋力向上を望むなら、やはり詰碁が一番です。簡単な問題でいいので繰り返し取り組み、ひと目で急所へ直行できるくらいに暗記してしまいましょう。
ともに黒番の問題です。
【第1問】 部分的にはふた通りの殺し方があります。しかし△3子の存在が、正解をひとつに限定しています。
【1図】 黒1のハネは白2と下がられて失敗。黒3で渡りを阻止すると、白4から6で生きられてしまうのです。
【2図】 黒1とこちらからはねるのが正解となります。
【3図】 白1に黒2と眼を奪えば、白は3、5とコウに訴えるよりありません。
【第2問】 △の存在で、黒の攻め方がどう変わるでしょう。
【4図】 黒1のハイで問題なしでしょうか。白Aなら黒Bとして、白Cの抜きなら、その左に放り込んで白死です。
【5図】 しかし白1の眼持ちが好手。黒Aなら白Bで生きです。これが△がある効果。見落としやすい筋かもしれません。
【6図】 従って黒1とずばり急所へ行くのが正解です。AとBを見合いとして、△の存在に関係なく白を仕留めることができました。
部分的に複数の選択肢があると分かるようになれば立派なことです。その上で周囲の状況を踏まえ、どれが最善かを絞り込む。こうした思考を繰り返すことが、棋力向上に役立ってくれることでしょう。