上達の指南

平田智也四段の「実戦的詰碁への誘い」

(3)生きた後のことを考える

(寄稿連載 2015/09/08読売新聞掲載)

 入段前の修業時代、主な勉強方法は実戦と棋譜並べ、そして詰碁でした。碁は結局、中盤から終盤にかけての読みの力が勝敗を左右しますから、読みを鍛えるために詰碁は欠かせないのです。
江戸時代に作られた「玄々碁経」や「発陽論」といった詰碁集から現代の詰碁本まで、あらゆる詰碁を入手してチャレンジしたものです。
今回は2題とも黒番でどう生きるのが最善かという問題です。

【第1問】 隅の黒を生きるだけなら簡単ですが――。

【1図】 黒1のヘコミで生きるのが正解。この黒が生きたことで、白の一団が自然消滅します。

【2図】 黒1のヘコミでも生きることはできます。しかしこれは失敗なのです。

【3図】 白1とこすむ手があるからで、Aのコウ仕掛けとBの生きが見合い。すっきり白を取れた1図とは大差です。

【第2問】 部分的にはふた通りの生き方があっても、正解はひとつです。

【4図】 黒1の下がりでも生きることはできます。しかし白2と下がられ、手を抜くと白A、黒B、白Cでコウとされてしまいます。

【5図】 黒1と生きると白2と眼を持たれ、白も生きてしまいました。これは失敗です。

【6図】 黒1のヘコミで生きるのが正解。この形は白Aが利かず、白は立ち枯れです。

【第1問】
【第2問】
【1図】
【4図】
【2図】
【5図】
【3図】
【6図】

●メモ● 平田四段は11日開幕する新人王戦決勝三番勝負を心待ちにしている。初めての番碁。相手は棋聖戦Cリーグ優勝の許家元三段。「許さんには昨年の若手棋戦決勝で負かされているので、リベンジのチャンス。気持ちを込めて、やり返すつもりで頑張ります」と力強い抱負。