上達の指南

黄孟正九段の「捨て石の楽しみ方」

(1)両方から利かせて捨てる

(寄稿連載 2010/04/27読売新聞掲載)

 アマチュアの方は、石を捨てるのが苦手のようです。特に置き碁で上手の脅しに遭うと、ひたすら逃げまくり、形勢を損じるケースが多いです。

 【テーマ図】 三、四段の方との6子局で、白3以下7とボウシして▲にプレッシャーを掛けたところです。黒はどう対処しますか。

 【1図】 多くの場合、▲の1子を逃げることを考え、たとえば黒1と堅実にコスみ出します。
 これには白2のツケから8のハネが用意してあり、黒9、11の取りに、白12の切りから14のツケで紛れてきます。続いて、黒Aには白B、黒Cには白Dのハネで白の筋にはまります。

 【2図】 黒1のブツカリも堅実な脱出策のように見えますが、白2のツケ以下8まで上下の隅を利かして、10の並びが変な手のようですが面白い。黒11には白12とカケて、これも紛れます。

 【3図】 黒1のケイマも脱出策の一つですが、白2以下黒7のとき白8、10のツケ伸びで筋に入ります。黒11にハウと、白12の切り以下白22まで黒最悪で、しかも右辺の黒は依然として不安定です。

 【4図】 結論は、黒1、3及び5、7と両方から利かせて▲を捨てるのがよいでしょう。
 右辺の白地は、黒Aのケイマ以下黒Eのツギまで打つことにより、大幅に減ります。一方、白は手を掛けたため、白Fと三々に入ることができず、隅の黒地は安泰なのです。

●メモ● 黄九段は1958年9月、台湾生まれ。76年入段。門下に謝依旻女流三冠。「まな弟子の対局に師匠が来ると負けない」との説があるが、謝三冠の対局を観戦した後の自身の対局はだいたい勝っている。「弟子の活躍に刺激を受け、頑張らなくては」との思いが好結果につながっているようだ。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】