上達の指南
(2)弱い石抱えず好点先行
(寄稿連載 2010/05/11読売新聞掲載) 指導碁では黒を攻める場合、黒がもがいてくれることによって白に得があればよい、という考えです。へたにもがくより、石が軽いうちに早めに捨てるのが賢い打ち方です。弱い石を抱えなければ自分の打ちたい所に回れる、これが捨て石の極意です。
【テーマ図】 五、六段の人との4子局で、黒2のハサミに白3から5と飛んで、白7の二間高ガカリが白の幻惑作戦です。
こうなると、黒は2の1子に恐怖心が芽生えてくるものです。
【1図】 ほとんどの人が黒1と動き出します。白2のケイマから4とすると、▲の1子を捨て、黒9とツケ越し、白11なら黒A、白10、黒B、白C、黒Dと渡ろうとします。しかし白は10のハネから12と隅の黒にもたれて、紛れるように打ちます。
【2図】 ▲を取られまいと、黒1と低く二間に開けば、白2に黒3のツケ以下7で一応治まり形になります。しかし、白8と右下隅にかかって絡んでいき、白は十分目的を果たします。
【3図】 △の飛びに上辺を受けず、黒1と二間に開くのは、白2以下黒9となってつらい形です。さらに白10に打ち込まれ黒2子が不安になってきます。
【4図】 結論は、黒1と受けて1子を捨てるのが賢明です。白は2と取らざるを得ず、黒は3から5と開きます。
右辺の白地は、後に黒A以下白Fまでが約束されています。こうなると、△と▲の交換は明らかに白が損をしています。
●メモ● 黄九段はプロになる前から、師匠の富田忠夫名誉九段の紹介で、梶原武雄九段に十数年にわたって教えを受けた。石の方向、石に対する感性などに感銘を受け、今でも自分の教室では、「オワ(碁は終わり)」「ニッピラ(二間ビラキ)」などの梶原用語を愛用し、好評である。