上達の指南

黄孟正九段の「捨て石の楽しみ方」

(3)かわいい石も惜しまず

(寄稿連載 2010/05/18読売新聞掲載)

 アマチュアの方が石を捨てないのは、「自分の打った石は、我が子のようにかわいくて捨てられない」という考えがあるのかもしれません。
 しかし、捨て石のメリットを会得すると、碁が一段と楽しく、強くなるものです。

 【テーマ図】 4子局で、白7まではよくある布石で、黒8の打ち込みは積極的なよい手です。

 ここで、白9のカケ以下13と押し、白15と黒1子にプレッシャーをかけると――。

 【1図】 半数以上の人は黒1、3と逃げ出します。やはり▲と打ち込んだ1子が大切なのでしょう。しかし、その間に白2から4とたたかれてはひどい損です。続いて、黒5には白6と軽くかわされ、右下隅に絡まれます。しかも右辺の黒はまだ安泰とはいえません。

 【2図】 黒1と伸びる余裕があればよいが、白2の急襲があります。黒3、5のツケ伸びには白6と押され、白12まで黒ピンチです。

 【3図】 黒1のケイマには、白2のツケ越しから8と押され、白10まで2図と大同小異です。

 【4図】 結論は、右辺は白が資本をかけたところなので、黒は惜しまず1、3と捨て石作戦でいくべきです。そして、黒7のコスミツケから9と、上辺で大きな得を図ります。

 右辺に対しては、黒A以下白Fまで先手で決めることができます。右辺の白地と右下の黒地は大きな差はありません。

●メモ● 指導を受けたアマに、「黄先生は石田芳夫先生に次ぐくらい指導碁がうまい」と言われることがある。なかなか負けないからだろうが、この言葉を素直に喜んでいる。師匠の富田忠夫名誉九段から、「指導碁でも絶対に負けてはいけない」と教えられ、これを実践しているのだという。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】