上達の指南
(4)無理をしないのが得策
(寄稿連載 2010/05/25読売新聞掲載) 石を捨てるといっても、やみくもに捨てるのではなく、状況次第です。捨てやすい条件の一つとしては、相手が資本を投入している場合は、無理をせず捨てるのが得策です。
【テーマ図】 4子局。黒8のハサミは積極的なよい手です。私がよく試みるのが、白9以下13と止め、白15のカケから17のボウシ。これだけ白が資本をかけたのですから、黒は捨てても惜しくはないはずですが――。
【1図】 テーマ図で、黒16のケイマは正着です。これを黒1、3から5と4線を飛んで受けるのは危険です。白6、8の出切りから14に切られ、白18に続いて、黒Aに白Bとシボられてはいけません。
【2図】 テーマ図に続いて、黒1、3で脱出は容易と思えるようですが、白4のカケツギが意外と粘りのある手です。
黒5以下もがいても、白14まで存外うまくいきません。
【3図】 黒1、3と脱出をもくろんでも、白4から6のツケがぴったりです。黒9とこすんで一応脱出はできるものの、まだ眼形がはっきりしません。また、白10の押さえが大きく、隅の黒にも不安が生じます。
【4図】 結論は、黒1と捨てるところです。白2に黒3から5とケイマで利かせば、白6と受けざるを得ません。
さらに黒7と当てれば、白はAのツギはつらく、白Bのコウは黒の花見コウ。捨て石作戦成功です。
(おわり)
●メモ● 黄九段は、プロ棋士になった頃からテニスを始め、キャリアは30年に及ぶ。最盛期はクラブのコーチにシングルスで勝つこともあるほどの腕前で、大会に出てたびたび優勝を飾った。最近は往年の強さはなくなったが、週に1、2度はコートに出て健康テニスを楽しんでいる。