上達の指南
(1)捨てることを怖がらない
(寄稿連載 2016/07/26読売新聞掲載) 石を攻められた時はどうしますか。あわてずに、大事な石か、捨てられる石かどうかを決める判断が大切です。
捨てられない場合は、さばかねばなりません。4回にわたって、皆さんとサバキについて考えていきたいと思います。このうち3回はプロの実戦を題材として取り上げます。よく見かける形が多いですから、ぜひマスターして下さい。
【テーマ図】 上辺に打ち込んだ白に、▲とこすみつけたところです。右上に黒が迫っていることと、右辺を白の模様にできるかどうかということがポイントです。白の動き方はイ、ロ、ハの三つが考えられます。
【正解図】 白1と捨て気味に軽く打つのが良いでしょう。黒2と強硬に分断してくれば、白3とさらに軽く打ちます。白9のケイマまでとなれば、上辺を最小限に捨て、右辺の白模様が広がっています。
黒2でAと押すのは白Bと伸びて十分でしょう。黒2を6のハネ出しは、白2と切られて黒が無理です。
【失敗図】 白1の伸びは堂々とした逃げ方ですが、この場合は重いのです。黒2から4と曲げられます。白5、黒6となれば、白地は増えませんし、黒Aの打ち込みなども狙われます。白1でBと飛ぶのも、黒2とかけられるでしょう。
サバキには捨て石がとても有効なのですね。捨てることを怖がらず、上手にさばいて下さい。
●メモ● 岩丸六段は1980年生まれ、大阪府東大阪市出身。現在は兵庫県宝塚市在住。28歳で結婚し、5歳の長男がいる。最近、碁を覚えたという。「ようやく当たりが分かる程度ですが、好きなようにやらせています。本気になってくれれば――」。盤をはさんで向き合うことがうれしい。