上達の指南

岩丸平六段の「サバキを覚えよう」

(2)相手の手見る高等戦術

(寄稿連載 2016/08/02読売新聞掲載)

 中国の国内棋戦から、ぼくが非常に感動した手を紹介します。アマの方に指導する時は、「切ってこられても、あわてないで下さい」とアドバイスしています。全部助けるよりも、少しぐらい取られた方がいい場合も多いのです。

 【テーマ図】 黒のツケ切りに△と引いた局面です。白の強いところなので、全部助けるわけにはいきません。どの石が大切なのかを考えます。▲が助かれば正解です。
 黒1のツケは今まででも打てたと思いますが、黒3のハネには驚きました。断点があっても怖がらない積極的な戦略です。この一手に感動でした。

 【正解図】 ぼくは黒1の飛びを見た瞬間、「なるほど」と感動しました。一見、サバキをあきらめたようなのですが、相手の出方を見た実にうまい手なのです。
 黒2から当てる手順と、Aから当てる手順とを見合いにし、白の次の手を待って決めようという高度な戦術だったのです。実戦は白2の伸びに黒3とこすんで、良い形で連絡することができました。
 白2をBなら黒A、白C、黒2で、これはハマリ形。黒は大いばりのサバキです。

 【失敗図】 黒1から当てるのはよくある筋です。この進行を考えた方が多かったのではないでしょうか。普通なら立派なサバキですが、この場合は下辺の白模様を大きくした損がひどい。左辺の1子と連絡しても得はしていないのです。
 アマの方は当たりを打てるところをすぐに打って、味や利きを消してしまうことが少なくありません。気をつけましょう。

●メモ● 岩丸六段は後藤俊午九段門下。同門に山本賢太郎五段。昨年の成績は14勝10敗。碁聖戦ではベスト8まで進出した。残念ながら山下敬吾九段に討ち取られたが、「あそこまで勝ち上がれたとは自分でもびっくりです。いい勉強になりました」とさばさばと語る。今年は7月まで6勝6敗。

【テーマ図】
【正解図】
【失敗図】