上達の指南
(4)ツケから小さく捨てる
(寄稿連載 2016/08/16読売新聞掲載) 前回までは、軽く相手との間合いを取りながらのサバキでしたが、今回は激しい石運びでさばきます。
「サバキはつけよ」という格言があります。世界アマチュア選手権戦からドイツ―韓国の対戦を題材としました。
【テーマ図】 白番です。模様を囲うなら白1がバランスの取れた好点。しかし黒2のボウシも急所で、白3、黒4と囲い合うことになりそうです。黒6までの模様比べは黒の方が有望です。ここから白が右辺に飛び込むのは無謀です。そこで白1の前に黒陣に仕掛けて行きました。
【正解図】 黒1とつけます。白2と反発してきますから、黒3と切り違えていきます。激しい打ち方ですが、白を取りにいっているわけではなく、なるべく小さく捨てようとしているのです。黒9までは一例ですが、左辺の黒の一団が強くなったのがプラスです。
黒9に白Aと逃げてくれば、黒Bとついで戦えるでしょう。黒Cも狙いとなります。
【失敗図】 では、黒1と飛んで逃げるとどうなるでしょう。白は2から4と動きます。黒5の飛びには白6とつけられ、モタレ攻めにされます。黒は弱い石が二つできて、あっという間に苦戦に陥ります。
一局の中では、攻められる場面は必ず出てきます。そんな時、サバキと捨てて打つことを考える習慣をつけると、必ず棋力はアップするはずです。(おわり)
●メモ● 岩丸六段は以前は井山裕太棋聖が主宰する研究会に入っていたが、今は一人で勉強することが多い。気の済むまで自分の読みと向き合う。「囲碁を気楽に楽しめる環境作りのお手伝いをしたい」と語る。最近は上方落語にはまっているそうで、月に1、2回、落語会に足を運ぶという。