上達の指南

井澤秋乃四段の「石の強弱を見極めて」

(2)ノゾキから迫力の攻め

(寄稿連載 2011/01/11読売新聞掲載)

 私は、指導碁ではなるべく本手を打つよう心がけていますが、あえて無理気味を承知で打つこともあります。それは相手に強くなってもらいたいからで、テストしている意味もあるんです。これは決していいわけではありません。

 【テーマ図(7子局)】 下辺の白8子は眼形がなく、薄い形をしています。私は相手がどう攻めてくるか楽しみにして、白1とツケて、黒の手を待っていました。

 【1図】 黒1の押さえから3と下がり、白4のケイマに黒5と並びました。部分的には立派な打ち方ですが、白6と開かれて甘いでしょう。白のいいなりになっている感じで、迫力がありません。失敗です。

 【2図】 黒1のハネから、3と伸びる人もいます。白4、6と隅の地を先手でえぐられ、8と形を整えられては、これも黒が大甘といわねばなりません。

 【3図】 黒1のハネから、3と当てる人も見かけます。黒5に、白6と切られます。黒7以下、白12に回られてはさっぱりです。隅の地を先手で取られたのがたまりません。

 【4図】 定石書にある通り、3図の黒3では、1の単ツギが正解です。白2のツギに、黒3と押さえます。白4、6とハネ下がっての生きは絶対です。そこで、黒7のノゾキから9と飛ぶのが非常に厳しく、白は生きた心地がしないでしょう。黒大優勢です。

●メモ● 井澤四段の名前は、やや古風な趣がある。お母さんが「乃」の一字を使いたかったそうで、10月生まれだから「秋乃」、3歳下で9月生まれの妹は「萩乃」になった。いま、交通の便利な大阪市内のマンションで、妹と2人暮らしをしている。「居候みたいなものですけどね」

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】