上達の指南

上村陽生九段の「相手の言いなりになるな!」

(4)序盤の反発精神が肝要

(寄稿連載 2011/05/24読売新聞掲載)

 相手の言いなりにならないということは、危険も伴います。特に、中盤や終盤の石が競ってきた時はそうです。序盤で反発精神を発揮し、ペースをつかむことが肝要です。

 【テーマ図】 私の指導碁から、3子局です。
 白3のカカリから7までは基本定石です。黒8とかかり、白9のハサミに黒10の三々入り以下18までも定石。黒は一手も悪手を打っていませんが、白19から21となってみると黒は立体感がなく、やや首をかしげたくなる序盤です。
 この後、黒イと広げても白ロの打ち込みを丸取りするのは無理で、左辺は確定地とはいえないでしょう。

 【1図】 左上は黒2の二間高バサミなど積極的に臨むのが、反発の第一歩です。白は3から5とすべりますが、ここでも白の言いなりにならず黒6と大場に展開するのが面白い。
 白7のコスミには、Aと受けず黒8のボウシが積極的な打ち方で、黒は左辺から下辺にかけ立体的です。

 【2図】 黒1の低いハサミは白2から4と掛けられ、立体感が出ません。高いハサミの方が有力でしょう。

 【3図】 テーマ図の黒8のカカリでは、黒1と大場を占め、白2のシマリには黒3と構えて立体感を出したい。続いて、白4のツケには黒5と外から押さえる一手で、黒15までとなれば左辺の勢力が生きてきます。
(おわり)

●メモ● 上村九段は1971年、21歳で入段してから40年になるが、昨年は9勝10敗とひとつ負け越してしまった。約30年前にも負け越しが1度あり、棋士生活2度目のこと。「この度の震災で目が覚めた思いがし、改めて一から出直す気構えで盤に向かいたい」と語る。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】