上達の指南
(2)トビ用い心理見定める
(寄稿連載 2017/05/16読売新聞掲載) アマチュアの皆さんは総じて「うわ手恐怖症」にかかっているようです。
同棋力の人やした手が相手なら堂々と踏み込んだ手を打てるのに、うわ手に対すると途端に、借りてきた猫のようにおとなしくなってしまう――今回は、そうした心理を見透かした手段を紹介します。
【テーマ図】4子局です。黒4ののち、白Aなら常識的ですが、あまりに教科書どおりで工夫がありません。した手にとっても勉強にならないでしょう。
そこで私は、白5のトビをよく採用します。この大風呂敷に対しどのように応じてくるかによって、した手の力量と心理を見定めようとしているのです。
【1図】実戦の応手で圧倒的に多いのが、黒1の受け。白2のトビに対しても同様に黒3なので、白は4と理想的な模様を築くことができました。
厳密に言えば、下辺は白の確定地ではありませんが、黒1や3と打った人がこののち下辺を荒らしに来ることはないでしょう。このまま白地となる公算が大ですので、白としてはこれ以上ない成果となりました。
【2図】何もためらわず、黒1もしくはAと打ち込む一手です。△は本来Aと構えるべきところなのですから、このような横着を許してはなりません。
うわ手の構えに打ち込むことが怖いのでしょうが――。
【3図】白1と飛ばれても黒2から6まで、何の心配もありません。
●メモ● 菅野六段にとって最大の楽しみは「子供のバスケットボール応援」とのこと。娘は昨年、全国高校選抜大会に東京代表として出場し、現在も大学で活躍中。高校2年生の息子もバスケ選手ということで、夫人の尚美三段と連れ立って観戦に出かけ、大声援を送っているという。