上達の指南
(3)細かくなる雰囲気作り
(寄稿連載 2017/05/23読売新聞掲載) 置き碁におけるうわ手は「小さなポイントを積み重ねて、最後に抜き去る」ことが基本方針となります。立ち上がりでいきなりハメ手のような奇策を弄し、一か八かの勝負をするのは、プロ棋士の指導方針ではありません。
徐々に得点を挙げて、終盤入り口で10目程度の差ならヨセでひっくり返せる――これがうわ手(プロ)の思惑なのです。
【テーマ図】3子局での私は白3のハサミから5とこすむ手段をよく用います。
【1図】大多数の方が、黒1と押さえてきます。部分的には定石とされている手なので、悪い手ではありませんが、私としてはこれを期待していました。
白2と打てば黒は3のカケですから、白4と四線に臨んで6と掛かり、黒5、7と換わります。これだけで上辺を放置し白8から12と下辺に展開、すでに碁盤は細分化されています。
別に黒が悪手を打ったわけではないので、まだ黒の大優勢。しかし、なんとなく細かくなりそうな雰囲気が出ただけでも、うわ手の成功、した手の嫌な流れになっているのです。
【2図】黒1の単カケがお勧めです。白2なら、黒3と右辺を占めて不満なし。黒石がAにあるより3の大場が勝ります。
【3図】白1に対しては、黒Aのケイマなら堅実ですが、黒2のツケがさらなる推奨手。白Bには喜んで黒Cと伸びます。白3、5の出切りなら黒6の飛びから8と押さえ、この後の戦いに不安はありません。
●メモ● 菅野六段は、した手が陥りやすいパターンとして、「白の着手にお付き合いしてしまうことが非常に多い」と話す。他に急場や大場があると理解していても、白石が来た近辺の黒石が心配になって受けてしまうのだが、「白への攻めに向かうなど、手を抜く勇気を持ってほしい」とアドバイス。