上達の指南

桂篤五段の「プロの着眼アマの発想」

(3)大寄せ 判断と計算がカギ

(寄稿連載 2014/04/22読売新聞掲載)

 今回は大寄せの考え方についてです。

 【テーマ図】 白番です。左上白の安否が気になりますが、どう対処したものでしょうか。

 【1図】 白の眼形は定かではなく、アマ10級の方だとこの一団を生きることに汲々(きゅうきゅう)となってしまいます。具体的には白1のハネでしょう。
 しかし黒2とカドに迫られると、白3と手を入れざるを得ないのがつらい。黒4も利かされて左上の白地は3目しかなく、黒6、8と右上を固められては、地合いで白が勝てないことは明白。生きたとはいえ、これでは失敗なのです。

 【2図】 有段者になると、白1と工夫することを考えるようです。▲の間の薄みをうかがおうとの意図です。
 しかしこの碁では黒2、4が右下の白に対して利いているので、白は5と生きなければなりません。そこで黒6とこすまれると、AとBが見合いで左上の一団がピンチに陥ります。

 【3図】 通常の手では勝てない――。そこでプロは、白1と二線のカドまで足を伸ばす発想にたどり着きます。黒は2、4と応じるくらいなので、そこで白5と黒のワタリを止めるのです。白1から黒4までの交換が働き、1図のように黒からいじめられることがありません。形勢も微細な半目勝負に持ち込むことができました。
 大寄せは判断と計算が問われます。これでは勝てない、との判断に至れば、発想を飛躍させねばなりません。

●メモ● 「自分なりで構わないので、想定図を作って計算しながら打てば、必ず上達スピードがアップします」と桂五段。今回も「ただ漠然と左上の白を生きるだけでは勝てない」と判断ができるかどうかが重要で、そこに至れば自然とチャンスが生まれる図を考え出すようになるという。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】