上達の指南

桂篤五段の「プロの着眼アマの発想」

(4)先手の寄せ 探す努力を

(寄稿連載 2014/05/13読売新聞掲載)

今回は小寄せがテーマです。先手がいかに大切かという話をしたいと思います。

 【テーマ図】 碁は大詰めを迎え、残すところはわずかです。黒が▲と押さえた場面ですが、白の立場で最善の寄せを問います。コミは6目半です。  こんな最終盤でも、簡単に勝敗が入れ替わるという典型例と思ってください。Aの点は抜き跡です。

 【1図】 白1とつぐのは手拍子というもの。黒2の逆寄せを打たれると、残すは後手1目が二か所だけ。白3、黒4となって、白の半目負けです。

 【2図】 白1の当て込みが逃せぬ一着です。放っておくと白Aの切りがあります。

 【3図】 黒は1とつぐよりありません。そこで白は2のツギに手を戻すのです。残すは黒3と白4のみですから、1図よりも右上の黒地が1目減っていることがお分かりいただけるでしょう。つまり白が半目勝つことができたわけです。
 私が言いたいのは「先手で決められる所は決めましょう」ということです。アマチュアの皆さん、特に級位者の方の碁を拝見していると、相手の着手にお付き合いしてしまい、先手で打てたはずのところを逃しているケースが実に多いのです。もったいない負けと言わざるを得ません。先手を探す努力をすることが大切です。これを実践するだけで、確実に勝率がアップするはずです。
(おわり)

●メモ● 「寄せが上達するためには、先手と後手に敏感になること」と桂五段。アマがプロの指導を受ける際、中盤を終えて20目ほど良くても抜き去られるのは、先手で打てる寄せを知らず知らずに逃しているからという。「寄せのキーワードは、とにかく先手です」

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】