上達の指南

北野亮七段の「石の強弱を見極めよう」

(3)最強モードで勢力生かす

(寄稿連載 2014/01/21読売新聞掲載)

 置き碁の場合、手数があまり進まず、置き石の効力が薄められないうちに攻勢に出るのが勝利への近道だと言われています。手数が進むにつれて実力の差が出てきて、攻撃するチャンスを逃し、次第に細かい碁に持ち込まれていくのです。皆さんも覚えがあるのではないでしょうか。
 私が指導している囲碁クラブの生徒さんで、70代、4段との4子局です。

 【テーマ図】 白1の三々から黒2に白3と入っていきました。黒4に白5と大ゲイマに軽く打ち、空中戦が始まりました。黒は外回りの勢力をどう生かすか。ここは「最強モード」で行きたいところです。「穏健モード」との使い分けが本題の重要なポイントです。

 【参考図】 黒1の背中はひとつの急所です。白2の飛びに黒3とのぞき、5の出から7の曲げはなかなかの食いつきですが、白10と幸便に左辺になだれ込まれては、黒がやや不満だと思います。

 【正解図】 黒1のカドが最も厳しい。これがお勧めです。白2から黒5までは必然。白6はシチョウをにらんでの変化ですが、黒7、9が緩まぬ強手でした。白12までと生きても、中央の白2子が立ち枯れになっては黒が優勢です。

 【実戦図】 黒1と控えたのは踏み込み不足でした。白12まで、ほぼ治まり形です。黒の利益はほとんどありません。じっくり攻めは、この局面には合わなかったのでした。

●メモ● 3年前、第24回世界囲碁選手権・富士通杯が大阪市の日本棋院関西総本部で行われたとき、北野七段が記録席に座っていた。皆が驚いた。七段が記録係を務めることはほとんどない。「世界の碁を肌で感じたくて志願しました」。生真面目な性格を表す説明だった。

【テーマ図】
【参考図】
【正解図】
【実戦図】