上達の指南

北野亮七段の「石の強弱を見極めよう」

(4)実利取りながら好機狙う

(寄稿連載 2014/01/28読売新聞掲載)

 日本棋院関西総本部の教室の生徒同士、3段と4段の対戦。互い先です。石の強弱の見極めが問われる局面で、強気で行くか、じっくり満を持すのか、参考になる一局でした。

 【テーマ図】 黒1の開き、白2の詰めは、どちらもそっぽで、大いに残念に思いました。右上方面が勝敗に直結する戦場になっており、黒からはイ、白からはロが攻防の急所でした。ここを逃してはいけません。

 【実戦図1】 やっと黒1のケイマに回りました。白2は腰が伸びて薄い。ここはイの下がりで生きておくくらい。黒はチャンスと見て3とこすみつけ、白は4と引きました。

 【実戦図2】 黒1から3と強引に切断しましたが、白4と生きられてみると、黒5の引きが省けず、黒の得は何もありません。白8まで、黒の猛攻は空振りに終わりました。
 白イが残っていては、黒7と守ってもつまりません。

 【正解図】 実戦図2の黒1では、じっくりモードに転換し、黒1とはねて実利を取りながら白への攻めを狙うのが正解でした。白2のグズミから4と伸び、6と脱出したのはやむを得ないでしょう。白はほとんどダメばかり打たされました。黒7と飛んで、まだ攻め味が残っています。地合いもリードです。
 石の強弱を見誤ると、いっぺんに形勢を損じます。ここぞという局面では、しっかり考えましょう。
(おわり)

●メモ● 北野七段の昨年の成績は12勝7敗。これまで棋聖戦で2回、名人戦で1回、最終予選に進んでいるが、まだ白星はない。第39期棋聖戦はA予選決勝で敗退。「私個人の成績はともかく、今は子どもたちを指導し、韓国や中国と互角に戦える若手を育てたい」

【テーマ図】
【実戦図1】
【実戦図2】
【正解図】