上達の指南
(4)「天敵」加藤に勝ち3連覇
(寄稿連載 2012/02/28読売新聞掲載) 小林の8連覇を振り返ると、相手は加藤正夫が3回、武宮正樹が2回、趙治勲、大竹英雄、山城宏が各1回となっている。島村俊広門下の山城以外は、みな木谷実門下で、小林は一門の兄弟弟子と格闘を続けてきた。
第12期の挑戦者、加藤は第2期に次いで2回目の出場。第2期では藤沢秀行に3勝4敗で敗れている。
小林より5歳年長の加藤は、小林が入段したとき、すでに四段に昇っていた。内弟子時代、小林は一番多く打ってもらい、よく負かされた、という。
この七番勝負の前まで、小林は加藤に20勝35敗と大きく負け越していて、加藤は小林の「天敵」と呼ばれたりした。
【局面図】 △とつけてきたところ。黒は普通に受けるか、それとも反発を選ぶか。
【変化図1】 黒1のハネは常識的だが、白2の常とう手段から8となってみると、ケイマに臨んだ▲がぼかされ、動きにくくなる。小林はこれは「白の注文にはまる」と見た。
【実戦図】 小林は黒1と強くはね出して反発した。加藤も白2のツケコシで応じた。
【変化図2】 白1と切るのは黒2、4のツケコシから8となり、黒Aの出とBの当てが見合いで白が困る。
実戦は黒21まで、地をかせぎ、白への攻めも見て、楽な展開になった。このシリーズでは4勝1敗で、小林3連覇。(敬称略)
(赤松正弘)
(おわり)
●メモ● 第12期七番勝負まで、小林は加藤に15も負け越していたが、生涯対戦成績は54勝61敗とかなり盛り返した。七番勝負のころ、「今日の私があるのは、加藤さんに負うところが多いんです。まとめてお礼をしたい」と語った小林は、きっちり恩返しをした。
第12期棋聖戦第2局
黒 棋聖 小林光一
白 名人 加藤正夫
247手完 黒7目半勝ち