上達の指南

甲田明子三段の「三々への対策」

(2)石の効率を最大限に

(寄稿連載 2015/10/06読売新聞掲載)

 三々に入ると碁の形が決まりやすくなります。喜んで入っていく人と、手どころとして残しておく人がいるでしょう。私はどちらかというと最後まで入らない方でしょうか。

 【テーマ図】 白1の三々は最後の大場。入っていくしかない局面です。押さえる方向は二つ。出来上がり図を頭の中に描いてください。

 【正解図】 黒1と押さえます。これは黒が大ゲイマジマリだからです。黒3、5の二段の押さえが重要です。黒11まで白2子を取って隅の地が大きい。白も黒の1子を抱えて不満はありません。先手を得て、要点に向かいます。

 【失敗図1】 黒1の方向はいい。しかし白4に黒5と緩めてしまいました。白8、10のハネツギまで決められ、隅は白地となりました。
 黒9の位置が中途半端です。手を入れるわけにもいかず、Aの切りが残ります。正解図はどの石もピンと張って、自分の仕事をしています。しかし、この図は黒の石が緩んでいるのです。つまり石の効率が最大限に発揮できていないということです。

 【失敗図2】 黒1の押さえは方向違い。部分的にはよくある定石ですが、この場合は黒の厚みが働きません。白に隅をえぐられただけ損です。
 石の効率を追求することはとても大切です。プロは形勢判断の際、無駄な石がないかどうかを指標の一つとしています。

●メモ● 甲田三段は岩田一九段の教室に通い、小学校高学年の時は入門クラスの指導にあたっていた。年上の生徒も教えていたという。普及には年季が入っている。学校から帰ると電車で教室に向かい、そのまま夜まで。帰りは母親が迎えにきてくれた。中学校卒業と同時に、住み込みの内弟子となった。

【テーマ図】
【正解図】
【失敗図1】
【失敗図2】