上達の指南

甲田明子三段の「三々への対策」

(3)攻めて主導権を握る

(寄稿連載 2015/10/13読売新聞掲載)

 隅の星に小ゲイマにかかられると、こすみつけて隅を守った気分でいるアマチュアの方を見かけます。しかしコスミツケは守りの手ではありません。相手を重くして捨てにくくさせるのが目的なのです。

 【テーマ図】 4子局。白1の三々がやってきました。守ったつもりでいると、嫌なものです。しかしこれは黒にとってチャンスなのです。上辺と右辺の形、力関係を考えて応手を決めてください。センスが問われます。

 【正解図】 自信を持って黒1と下がりましょう。三々と上辺の白を分断し、攻める姿勢です。後はどうなってもこう行きたい。
 白2から隅で生きても慌てません。黒9のボウシが絶好点。白10には黒11と圧迫して快調です。プロからすると、この白はかなり危ない。生きたとしても左辺との絡みになるでしょう。黒は主導権を握り、攻めの効果を手にすることになります。白は三々に入ったことを後悔するでしょう。

 【変化図】 白2から4とはってくれば、黒5、7と強く二段に押さえます。隅の地は気にしません。ここは手厚く対応し、黒11のボウシに回る要領です。

 【失敗図】 黒1は自分の安全ばかりを考えています。右辺に多少の地を増やしても高がしれています。一番の問題は白を安定させてしまうことです。こうなると主導権は白が握り、この後、黒はどんどん追い込まれるでしょう。

●メモ● 中学卒業後、岩田一九段の内弟子となった甲田三段はその後、少し足踏みしてしまう。なかなかプロ試験に合格できず、自身をさいなんだこともあった。「これでだめなら、もうあきらめよう」と臨んだ試験。あれよあれよの快進撃で、ついにプロの切符をつかみ取った。23歳だった。

【テーマ図】
【正解図】
【変化図】
【失敗図】