上達の指南
(3)ツケて大石に食い付く
(寄稿連載 2010/02/16読売新聞掲載) ◆第31期名人戦予選 (白)九段・小林光一 (黒)九段・小松英樹
中国流は、ほとんど5手目に辺の大場を占めます、締まりと開きを兼ね合わせたような感覚でしょうか。大ゴミ、足早な現代碁が生んだ申し子ともいえます。必然的に黒の模様に白が入ってくるケースが多くなりますから、戦い、とくに攻めが得意な棋風の方にはおすすめの布石なのです。
【局面図】 白6は対中国流の研究で生まれた手です。僕が第12期棋聖戦の五段戦で優勝し、六段戦優勝の依田さん(紀基九段)と全段争覇戦を打った時、依田さんは白8でイと一間に飛んだのを覚えています。白18とくつろげたのに対し、黒はロ、ハなどが考えられます。
【参考図1】 黒1には、白2にじっとこすむのが良さそうです。黒3に整形すると、白4と飛んで、しっかりしています。ゆっくりした碁になり、僕の好みではありません。
【参考図2】 黒1の飛びはどうでしょうか。白2から4まで、飛び合いになります。白は一歩先行しているのが有力で、黒は薄みが気になり、まとめにくいのです。
【実戦図】 黒19とツケて、白に食い付くべきだと判断しました。黒23の並びが急所で、右上の薄みをカバーしています。黒25はややぬるく、すぐに27、29だったでしょう。
黒29となり、黒はけっこう地があるのに対し、白は大石がいつまでも不安定です。中国流おすすめの図でした。