上達の指南
(4)中央志向から実利に変化
(寄稿連載 2010/02/23読売新聞掲載) ◆第23回世界選手権・富士通杯予選 (白)九段・柳時熏 (黒)九段・小松英樹
中国流の布石は、中央志向の碁型になりやすいのですが、相手が厚い棋風なら、当然、差し手争いが始まります。そういう場合、僕は実利に変化することが多いようです。これでもけっこう地にからいんですよ。
【局面図】 白8の挟みに、黒9と二間に構えたのはやや変則かもしれません。白10の開きに対し、黒イの一間、あるいはロのコスミの受け、ハの飛びなどが目に映ります。
【参考図1】 右下を飛びやコスミで受けるのは、ややぬるい気がしないでもありません。白1のボウシかAとコスミつけられそうです。
【参考図2】 実戦経験はほとんどないんですが、黒1と気合で飛び、白2に、黒3とボウシするのも有力なようです。何より積極的な打ち方が僕の好みなんですから。
【実戦図】 僕は黒11とツケました。柳さんは白12とハネ、14とついで涼しい顔です。中央が厚い棋風の柳さんに対して、こういう厚みを許すかどうか、判断を求められるところなんです。黒15まで、黒がからいんじゃないか、というのが一般論ですが、柳さんには通用しません。
白24、26と一貫して中央経営を目指し、黒25、27と、黒の実利と白の模様の対抗になりました。将来、黒A、白B、黒Cのハネ下がりが20目以上の手です。
中国流の考え方の一端をお話ししてきました。少しでもご参考になれば幸いです。
(おわり)
●メモ● 棋士に最も人気のあるスポーツはゴルフだろう。小松九段も3年ぐらい前に始めた。日本棋院のハンデは14だが、実際の実力は? 「昨年は40回ほどコースに出た。楽しみが8割、体力づくりが2割かな。それにしても、対局数(28)よりも多いのはどうもね」と苦笑い。