上達の指南
(2)接点逃さず主導権握る
(寄稿連載 2017/09/26読売新聞掲載)序盤は碁盤全体を見て、大事なところを見極めましょう。模様の碁は自分の模様を広げながら、相手の陣形を大きくしないようにするのが肝心です。特に、互いの模様が接しているところには優先的に向かいたいものです。方向さえ合っていれば大丈夫。細かい戦術や技術より、大きな戦略を大切にしたいものです。
【テーマ図】白番です。右辺の白模様と上辺の黒模様が接しています。どちらのスケールが大きくなるかで、この碁の勝敗が決まるといってもいい場面です。天王山は躊躇(ちゅうちょ)することなく最優先に打ってください。
【1図】白1のケイマが双方の模様の接点で、逃せぬ急所です。黒Aなどと受けてくれれば利かしで、その交換だけで満足です。白Bのシマリなどに回って、流れるような気分のいい進行でしょう。ですから、黒は2など他の好点に向かうことになるでしょうが、白5と打ち込めば黒模様を荒らすことができます。右辺の白模様だけが大きくなって主導権は白のものです。
【2図】白1などは方向を見失っています。黒2の曲げで模様の接点を占められてはいけません。今さら右辺を受けるわけにもいきませんから白3などと他の好点に向かいますが、黒4の打ち込みが強烈です。白は抵抗することができません。白5のツケから7とぶつかって被害の拡大を止めるくらいです。
模様の接点は逃せぬ急所ですから、疎(おろそ)かにはできません。なにをおいても先着して、主導権を握りましょう。
●メモ● スポーツが好きで若いころは棋士の野球チームで活躍。現在はゴルフに週1回出掛ける熱心さ。対局のある木曜日の前々日の火曜日にラウンドするのがいいリズムになっているという。冬でもゴルフは欠かさないが、この夏の猛暑ではさすがに控えた。いつも日焼けしていて健康的だ。