上達の指南

小松英樹九段の「模様を楽しもう」

(4)石を捨てる勇気も必要

(寄稿連載 2017/02/23読売新聞掲載)

 石を取るのは大好きでも、取られるのは碁に負けるより嫌いだという方もいるでしょう。もう少し大らかに打つことをお勧めします。相手が石を取りに来たときには捨てる方がいい場合もあるのです。小さな石にこだわって攻められるより、相手が手間をかけている間に、他の好点に向かうのが賢い打ち方です。ときには捨てる勇気を持ちましょう。

 【テーマ図】黒番です。△とのぞかれた場面です。ノータイムで黒イとついでしまうのは考えものです。重くなって負担になる可能性があります。黒にとっては上辺の模様がこの碁の生命線です。碁盤を大きく見て、作戦を練り直してください。

 【1図】黒1と詰めて黒3子を捨ててしまうのが賢い考え方です。白2と切られても、右下の白はすでに生きている石ですから、たいしたことはありません。次いで黒3の飛びが上辺の黒模様を広げる好点です。スケールの大きな碁になりました。後はどうあれ楽しい一局になることは間違いないでしょう。

 【2図】黒1のツギは、白2の飛びから追われると放っておくわけにはいきませんから、黒3、5と逃げるだけになるでしょう。白6まで上辺の黒模様がしぼんでしまいます。

 【3図】捨てるにしても、黒1とつけるのは高等テクニック。白2のハネには黒3とはね返すのが手筋です。こういういっぱいの打ち方は、最後まで正確に打ち続けないと破綻する危険も伴います。(おわり)

●メモ● 地方の大会、囲碁まつりなどでアマチュアと接する機会が多い。解説だけでなく、指導碁で対局するのもまた楽しいという。碁の上達には、定石や手筋を覚えるのも大切だが、碁盤全体を見て手厚く構えるのが肝心とのこと。勝ち負けにこだわり過ぎずに、気持ちよく打つことを勧めている。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】