上達の指南

小松英樹九段の「模様を楽しもう」

(3)急所を見極め 立体的に

(寄稿連載 2017/10/03読売新聞掲載)

 お互いに模様ができて、打ちたいポイントがたくさんある碁では、優先順位に悩むことになるでしょう。できることなら、自分の模様を広げながら相手の模様は小さくなるような急所を見極めたいもの。模様は平面的なままより、立体的に膨らんでこそ価値が高まります。

 【テーマ図】白番です。白は上辺と下辺に模様ができています。黒は右辺と左辺が模様です。互いに二つずつ模様がありますが、急所は一つ。数手先まで想定して方向を決めてください。

 【1図】白1のケイマが互いの模様の接点です。黒2と受ければ利かしで、上辺の白模様を広げながら左辺の黒模様の拡大を制限する理想的な展開です。次いで白3に打ち込んで右辺の黒模様を荒らせば主導権を握ることができるでしょう。あるいは白Aの飛びで上辺をさらに広げるのも好点です。

 【2図】白1の打ち込みを急ぐのは方向を誤りました。黒2の押さえが急所で、ここが肝心なラインでした。白3、5とはね伸びて受けるくらいですが、上辺の白の広がりが制限されてしまいます。黒10まで左辺の黒模様は目いっぱいに膨らんでいます。模様の接点は出入りの大きい急所なのです。

 【3図】白1には、黒2の大ゲイマから模様の拡大を止めるのが急がれます。しかし、白3のツケで左辺の黒模様を消せば白は満足です。模様の碁では、白1のような分かりやすい手が好手になることが多いことを、覚えておいてください。

●メモ● ここ数年は国際戦に予選から参加している。交通費も宿泊費も出ないし、6日で5局などハードだがそれも慣れたという。シニア枠なので韓国や中国の旧知の棋士たちと対戦できるのを楽しみにしている。今年は三星火災杯で見事予選を突破、9月の本戦に出場した。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】