上達の指南
(2)相手の石を分断しよう
(寄稿連載 2007/04/23読売新聞掲載) 序盤から互いの石がぶつかる競り合いの碁で、一手のミスから早々に窮地に陥ってしまった経験が、誰しもあるのではないでしょうか。少し先まで読んで、自分の石を強くし、相手を弱めるような手を選べればベストです。
女子学生の全国大会で3位になった実績を持つ22歳のアマチュアを相手にした3子の指導対局を題材に取り、競り合いでの打ち方を考えてみましょう。
【テーマ図】 黒40からの仕掛けは無理で、白41の反発を受けました。私が白57から左辺に手を付け、盤の左側で競り合いになりました。左下73のかかりから、79とすべって収まろうとした場面で、次の一手は。どうすれば相手に最もひびくかを考え、答えを出してください。
【変化図】 白は左辺、左下ともまだはっきり根拠を確保していません。自分はつながり、相手を分断する黒1が素直で、厳しい手です。こうなると、白が左辺、左下の両方を無傷で切り抜けるのは難しい。一例を示すと、左下を生きるには白2が欠かせませんが、すると黒は、左辺に3と飛び込んでいきます。白8のコスミをきかして白14まで生きても、今度は、黒15で左下が死んでしまいます。
このほかにも変化はありますが、ほとんどの場合、白がいじめられます。さかのぼって、テーマ図の白79は、打ち過ぎでした。相手の弱い石を分断するチャンスがあれば、逃さないことです。
【実戦図】 黒1と三々に受けました。この手を思い浮かべた人は少なくないかも知れませんが、この場面では甘い手。白2から左辺と下辺をつながられ、逆に黒が苦しい立場になってしまいました。正解の着点を選んでさえいれば、自然と有利な流れに持ち込めていたはずでした。
●メモ● 小西八段は第19期女流鶴聖戦(1997)、第7、8期女流最強戦(2005、06年)と準優勝に終わり、あと一歩で悔しい思いをしてきた。「準をなくすには、大一番でふだん通り打てるようになることが課題」と話す。