上達の指南
(3)手拍子には落とし穴あり
(寄稿連載 2007/05/07読売新聞掲載) 碁でよくある失敗のひとつが、十分に読まないで手拍子で打った手がまずく、損をしたり、ひどい時は勝っている碁を負けにしてしまうことです。「あ、しまった」と思う場面を減らせば、それだけ勝率もアップします。
神戸の囲碁教室に通って意欲的に碁を勉強している中学2年生、棋力はアマチュア二段くらいの少女との指導対局(4子局)で、アマ有段者の碁でもしばしば見かけるタイプの手拍子のシーンがありました。
【テーマ図】 左上黒6とつける前に、黒16と挟めば、白は5の石から一間飛びくらいでしょう。それから黒6が調子でした。右下で白が23、25と両がかりをし、三々へ入ったのに対し、黒はわかりやすく打って外側に勢力を張る方向で応じています。白31と打ってきた局面で、黒が簡明を目指すには、どう応じるとよいでしょうか。
【変化図】 しっかり黒1とつぐのがわかりやすい。白は2、4のはねつぎを決め、黒1を打たせたのを利かしと見て、左辺、右上などに転戦していくことになります。黒は予定通り外勢を張れて、下辺星に打ってある石の位置もよく、不満がありません。白Aの割り込みは、黒B、白C、黒Dで心配ありません。対局中、私はこの図を想定していました。
【実戦図】 黒1と、ついあたりを打ってしまい、黒のペースが乱れました。白4、6で紛れてきました。黒11は12に伸びているくらい。動揺して少し着手が乱れたのかも知れませんね。白16と2子を抜かれたのは損です。
当たりが無条件で利く局面は、しばしば、落とし穴があります。考えずに打ってしまいそうな時、「あ、危ないかも」と思い直し、ありがちなミスを防ぎましょう。
●メモ● 小西八段の気分転換法は、自宅でのんびりと、DVDなどでドラマを鑑賞すること。最近はまったのは、1970年代に放送された古い方の「白い巨塔」。事件の謎解きが楽しい「古畑任三郎」も好きだという。