上達の指南
(4)注文に言いなりではだめ
(寄稿連載 2007/05/14読売新聞掲載) 3月半ば、日中韓の女流対抗戦「第5回正官庄杯世界女子最強戦」の中国・広州ラウンドに、日本チーム副将として行ってきました。各国5人による勝ち抜き方式。相手は韓国チーム最後のとりで、主将の李ビン真五段でした。
その対局で、アマチュアのみなさんにも考えてみてほしい局面がありました。
【テーマ図】 私の白番。下辺の黒模様をうまく消し、こちらが面白いと思っていました。李五段は中央黒59と、21の1子の逃げだしを見せつつ、局面打開を図ってきました。どう応じるべきか・・・。
【変化図】 背後から白1と迫るのがよさそうです。黒が4と伸び、白は5とつながる展開が予想されます。左辺は白が強い場所で、黒3子は重い、と見ます。一気に有利になるわけではないですが、こう打つべきでした。もし白1に黒3なら、喜んで白2と応じ、左辺から中央へ模様を広げます。黒が当たりの1子を引っぱり出す手は、ダメが詰まっていて成立しません。
【実戦図】 白1、3と黒1子を取らされ、黒4の飛びを許しました。白5では、白模様が小さくなりました。これでは、黒の注文に、言いなりになってしまった形です。黒6の勝負手も打たれ、その後、徐々に形勢を損じました。右辺で難しい戦いが起こって勝機がめぐってきたのですが逃し、中押しで敗れました。
李五段はその後、日中の主将も破り、韓国チームが優勝。「私が倒しておけば」と、日本が勝てなかったことに、責任を感じます。形勢がよさそうな局面で、慎重になるのが人間の心理ですが、無理気味の注文にまで言いなりになると、すぐリードが吹き飛ぶので、厳しく切り返す手がないかをよく考えないといけません。自戒の念をこめてアドバイスします。
(おわり)
●メモ● 小西八段は、関西棋院の同僚である苑田勇一九段の研究会、結城聡九段の研究会に参加。ベテランの清成哲也九段、若手有望株の瀬戸大樹六段、元女流本因坊の吉田美香八段らと一緒に腕を磨いている。