上達の指南

河野光樹八段の「復活 高中国流」

(1)低く受けて大きく攻める

(寄稿連載 2015/07/28読売新聞掲載)

 高い中国流は中央志向で豪快な戦法ですが、すきがあってやや甘くなる傾向がありました。それで、地に辛い時代に忘れ去られたようになったのです。
 ところが最近、この高い中国流が見直されてきました。復活の理由を理解すれば、自信を持って空中戦を楽しめるでしょう。

 【テーマ図】 昨年の棋聖戦七番勝負第3局の布石です。井山裕太棋聖が黒番で、相手は山下敬吾九段です。黒1から5までが高い中国流です。白6と下辺からかかったときに、黒7と低く受けるのが新しい発想です。今まではイと一間に受けるものでしたが、それは白ロの打ち込みがやっかいです。低く受けることで弱点を防いでいるのです。

 【1図】 ▲と高く受けた場合、白1の打ち込みにどう応ずるか。これが高中国流の悩みの一つでした。黒2と上につけるくらいですが、白9のスベリまで楽に荒らされます。

 【2図】 黒2と下がって攻めようとしても、白3と飛び出されると手に負えません。

 【3図】 低く受けても、黒2とつけたのでは▲の位置を生かしていません。白3の伸びから5とぶつかるなど、白が生きるのは簡単です。

 【4図】 黒2のボウシが厳しい。白3のコスミには黒4とかけて大きく攻めます。これでこそ▲の石が生きるのです。白は簡単にはさばけません。これが、高中国流が見直された理由の一つです。

●メモ● 河野八段は宮崎県出身。1974年1月生まれ。坂田栄男二十三世本因坊門下。92年入段、2009年八段。93年棋聖戦初段戦優勝。14年通算400勝達成。棋士は運動不足になりがちなので、なるべく歩くようにしている。1~2時間続けることもある。40代になって健康に気をつけるようになった。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】