上達の指南

河野光樹八段の「復活 高中国流」

(2)三々をけん制する効能

(寄稿連載 2015/08/04読売新聞掲載)

 高中国流が見直された理由をもう一つ。最近のからい打ち方に対して、意外な効能があったのです。

 【テーマ図】 白1のカカリからすぐ3と三々に入るのが、よく打たれるようになりました。こんなに早く三々に入るなんて昔は考えられませんでした。地を稼ぎ過ぎて全局的に遅れてしまいそうですが、思いの外、有力とされていたのです。
 右辺がイの低い構えだと、白3の三々からの荒らしは効果的ですが、▲と高い中国流の構えでは白3の魅力は半減するということに気がついたのです。では、▲とイの違いを確かめてみましょう。

 【1図】 黒1と遮って白を隅で生かします。白10の押さえに黒11とはねれば、白12の開きまでが定型です。このとき▲の高い開きがバランスのいいところにあるのです。
 Aの低い中国流だと、白Bのボウシや白Cの肩突きなどで模様を消されるのが不満でしたが、高い中国流ならその弱点がありません。
 つまり、悩みの種だった白3の三々は、かえって歓迎なのです。これが高中国流が見直された二つ目の理由です。

 【2図】 三々に入る手を封じられたとなれば、白は1のカカリなど他の布石を選択することになるでしょう。先手を得て、黒4のカカリから左辺に展開するか、Aのカカリから上辺を重視するかはあなた次第です。

●メモ● 坂田栄男二十三世本因坊のもとで、内弟子として少年時代を過ごした。師匠宅が東京・市谷にあったころ、釣り堀でコイを釣って帰ったら、師匠が食べてくれたのだが、刺し身のようにしていたのが心配だったのを、今でも覚えている。いい思い出をたくさんもらい幸せな弟子時代だったという。

【テーマ図】
【1図】
【2図】