上達の指南
(2)定石の丸暗記はやめよう
(寄稿連載 2007/06/25読売新聞掲載) 「定石を覚えて2目弱くなり」という川柳がありますが、やみくもにたくさんの定石を暗記する愚かさを皮肉っているのでしょう。
定石は丸暗記するのではなく、定石ができる過程での一手一手の意味をしっかりと理解してこそ、本当の自分の定石になるのです。
【テーマ図】 4子の置き碁で、白13とカケたところです。黒は2とハサむ以上、白11の飛びから13とカケてくる定石は知っていなければなりません。
しばしば見かける定石で、皆さんも白の立場、黒の立場でよく打っているのではないでしょうか。
【1図】 黒は1の押しから3と曲がってくるでしょう。白4のノビに黒5のハイから7となるのが定形です。
しかし、この場合は△と黒7の関連が悪く、白Aの押しに黒Bの受けが重複しています。黒がいけないでしょう。
【2図】 1図の黒5では、黒1とケイマすべきです。また、黒A、白Bの交換をした後でも、黒Cのケイマなら1図よりはやや罪が軽いでしょう。
【3図】 さて、テーマ図に戻って、白13に対する黒の定石選択はというと、黒1のコスミツケが正解です。
白は2と押さえるくらいですから、黒3のハネを一本利かして白4まで。この定石なら黒満足です。
右上にできた白の厚みを、△が程よく緩和しており、黒5の締まりが絶好です。
【4図】 3図の手順中、白2で、白1の下がりなら今度こそ黒2から6とケイマし、次に黒7の割り込みを狙います。
△と白1の交換が利かしになっていて、白はAに変化することができず、白7と備えるしかありません。続いて、黒8のケイマが名調子で、白一団を攻めながら上辺を盛り上げて、理想的な運びになります。
●メモ● 孔六段は4月に武宮正樹九段、梅沢由香里女流棋聖と共に、中国湖南省での「湖西杯中日囲碁対抗戦」に招待された。中国には度々遠征しているが、風光明美な田舎の美しさと、楽しいメンバーで最高の旅だったという。