上達の指南
(3)相手の厚みを崩す工夫
(寄稿連載 2007/07/02読売新聞掲載) アマチュア有段者の方は、いろいろな定石を試してみることです。新しい定石を打つことによって、そこから新しい発見があるかも知れません。
ただし、常に局面の配石に合った定石を選ぶことに気を配ります。そして定石本来の意味を理解して打てば、よい手助けになるのです。
さて、今週からはプロの碁における定石選択を取り上げます。
【テーマ図】 張栩碁聖と羽根直樹九段の碁を拝借しました。羽根九段が白22とカカったところです。
黒としては、左上の白の強大な厚みを、どのように緩和するかが、最大のテーマです。
ここで張碁聖の選んだ定石は――。
【1図】 黒1とハサみました。白2のコスミは予想どおりでしょうが、ここで黒3の開きが張碁聖の定石工夫の一手でした。
白4に黒5以下隅を治まり黒11と飛びました。あわよくば、黒Aのノゾキから壁攻めまで狙っています。
【2図】 1図黒3では、普通は黒1の開きですが、白2とカケられて、黒はうっとうしいのです。黒3と飛んで取られることはないでしょうが、白Aと攻められて、黒はかなりの苦労を強いられそうです。
【3図】 再び1図に戻って、黒1のハサミで、黒1、3のツケヒキは、地にからい堂々とした定石ですが、これは部分しか見ていません。黒5に、白はAより一路高く6と来るかも知れません。
これで黒悪いということではなく、細かい碁になるでしょうが、物足りません。
また、ことによると白6でBと大きく広げてくる可能性もありそうです。もし、皆さんが相手にこう打たれたら、どこから消してよいか途方にくれるかも知れませんね。
●メモ● 孔六段は岳父の小林覚九段と会うと碁の話が中心だったが、最近は長男、徳志くんの誕生で一変。覚九段の関心は初孫に移り、孔六段に言わせると「メロメロで、世間でもまれに見る甘さ」。