上達の指南
(1)碁が単調になるのを嫌う
(寄稿連載 2016/08/23読売新聞掲載) 近年、中国、韓国の影響もあり、日本の若手棋士の間でも序盤の研究が進んでいます。進化する序盤作戦について考えてみます。
【テーマ図】白4まで双方小目で、黒5のカカリに白6、8とツケ引き、穏やかな立ち上がりです。ここで黒9の小ゲイマガカリが有力とされ、よく打たれるようになりました。
【1図】これまでは黒1と高くかかり、白2、4のツケ引き以下黒9と星に構えました。上下の中間点を占めて、黒不満ない、との見方でした。しかし最近では、ふた隅をツケ引かれて地に甘く、また碁が単調になるのを嫌うようになったのです。
【2図】そこで考え出されたのが黒1のカカリで、白は2と切る気合です。ここで黒は3、5と圧迫して、7と左下を伸び、9と構える。一応立派な運びのようですが、白10の押しが絶好です。
【3図】そこで次なる工夫が生まれます。黒1の大斜のカケが、それです。白は2のコスミツケから4のハネが対策のひとつですが、白10までの分かれは、2図に比べて白に多くはわせている、というのが黒の言い分です。
【4図】それではと、白1とつける手が考案されました。これに黒は2のハネ以下6が簡明策ながら地にからく、10まで十分の分かれでしょう。黒2でAと割り込む難解な変化もありますが、あえて難しくする必要はありません。
●メモ● 小山三段は神奈川県出身、19歳。父は小山竜吾六段、母は栄美六段、そして祖父は鎮男八段という三世代にわたるプロ棋士家族。碁の手ほどきをしてくれたのは母方の祖母だったという。院生の頃は家で両親に打ってもらっていたが、今は小山三段が中心となって検討会を行っている。