上達の指南

小山空也三段の「進化する序盤作戦」

(4)小林流の改良型 世界戦で

(寄稿連載 2016/09/13読売新聞掲載)

 若手棋士の研究によって進化する布石の中には、従来の布石の改良型も見られます。小林光一名誉棋聖が全盛期に多用した「小林流」もそのひとつです。

 【テーマ図】黒1、3の星と小目から5と掛かって7に構えるのが小林流です。白は8の大ゲイマガカリが穏やかですが、黒11から13のカケが改良型です。今年、世界戦で中国の柯潔九段が打って注目されました。

 【1図】従来の小林流の一例としては、テーマ図の黒11で、黒1とはさみ、白2の押し以下、白12などがあります。しかしこれは、白が完全に治まった上に、下辺の黒にはまだ隙があります。これを改良したのが、テーマ図の黒11から13です。

 【2図】この後、白1の曲がりから3のケイマが相場で、白5のコスミツケに黒は6のツギが力強く、白7の辛抱はやむを得ません。黒は立派な厚みです。

 【3図】2図の白3のケイマに代えて、白1とこすみつけ、黒2に白3のハネ出しから一戦を挑んでくるなら、黒4以下16まで黒が打てるでしょう。

 【4図】今年の天元戦本戦、余正麒七段(黒)と許家元三段(現四段)の一戦に現れた小林流です。実戦とは石の方向が異なりますが、許三段は白A、黒Bを保留して白1とすべり、黒2に白3とこすみました。後に白Cと打ち込み、黒Dに白Eと黒模様で生きを図る作戦です。今後も様々な進化があることでしょう。(おわり)

●メモ● 小山三段はアイドルグループ「ももいろクローバーZ」のファン。何事にも全力で取り組むところが好きだという。年に数回はライブにも行く。囲碁の世界でも、あのようなファンが熱狂するイベントをできたら、と思っている。「手合に勝った後、ももクロの番組を見るのが最高」

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】