上達の指南
(1)一線ハネの権利にも神経を
(寄稿連載 2005/08/22読売新聞掲載) 皆さんこんにちは。久保秀夫です。
僕もアマチュアの方々を相手に指導碁を打たせていただく機会があるのですが、そういった際に気付くことの一つとして、もっと石のつぎ方に神経を使ってほしいということがあります。
確かに皆さん、"石を連絡する"という大きな目的は達成しています。しかし一口に石のつぎ方と言っても、堅ツギもあればカケツギもあり、タケフツギやケイマツギ、さらには大ケイマツギなどの間接的なものまで、実に様々な方法があるのです。
その多彩なつぎ方の中からどれを選ぶか――。この点に、その人の棋力が表れるのです。今週から4回にわたって、そんなお話をさせていただきます。どうぞよろしくお付き合いください。
【テーマ図】 AとBに二つの断点があるので、黒としては手を入れる必要がありますが、どうつぐのが最善でしょうか?
【1図】 黒1と左側の堅ツギでも「二つの断点を守る」という目的は達しています。しかし白2の一線ハネを利かされてしまうのが、大きな減点材料。この図を正解とするわけにはいきません。
【2図】 指導碁などでは、黒1と右側をかけつぐ人も多いですね。でもこの手も前図同様、白2、4の一線ハネツギを利かされてしまうという事情は変わっていません。
つまり黒としては、二つの断点をカバーしつつ、白からの一線ハネが先手にならない工夫をしたいわけです。
【3図】 黒1の堅ツギが正解となります。これなら白aのハネが先手となるのを封じているだけでなく、逆に黒bのハネが先手となります。
この一線ハネがどちらの先手となるかの違いだけで、1図や2図とは、およそ4目の差があります。これだけで勝敗が引っ繰り返るほどの、大きな違いと言わざるを得ません。
●メモ● 久保五段は熊本県出身。30歳。1991年の高校選手権で優勝して、日本棋院の院生となり、95年入段。2000年五段。01年、新人王戦で準優勝。