上達の指南

久保秀夫五段の「ツギ方でわかる棋力」

(2)切り取り許さぬように

(寄稿連載 2005/08/29読売新聞掲載)

 今週は4子の置き碁を題材にとりました。白5のかかりに黒6と挟み、白7から15までは、置き碁定石と言っていいでしょう。そして、黒の次の一手が今回のテーマです。AとBに二つの傷がありますが、どう補うのが正着でしょうか。

 【1図】 アマチュアの皆さんは、半分以上の方が黒1とついできます。
 しかし、これは失着。自身はしっかりと安定しましたが、白aの切り取りが残っているため、テーマ図Cのツメの迫力が今一つなのが減点材料です。

 【2図】 従ってここは、手強く黒1とつぐ一手です。これなら続くテーマ図Cのツメが、1図より格段に厳しくなっていることが分かるはずです。

 【3図】 しかし皆さんがなかなか黒1を打てないというのは、白1からの出切りが怖いからなのでしょう。白3の切りには、黒4とついでいて問題ありません。白5、7のハネツギには黒10の下ハネがうまい手で攻め合い勝ち。また、白5でaなら黒5と押さえ、やはり攻め合い勝ちです。

 【4図】 白1ののぞきも心配でしょうか。しかし黒2の切りがいいタイミングで、白7までを利かせてから黒8と押さえれば、白1の1子を取り込むことができます。白9以下には黒16まで。
 なお、白3で4の下アテなら白13の切りを残すことはできますが、黒3の伸びに白5からずらずらと二線をはわなければならず、それだけで白つらすぎるとしたものです。

 というわけで結論ですが、白の二線切り取りを許さない2図の黒1が肝要です。3図と4図の対策さえ万全ならば、何も怖いことはないのでした。

●メモ● 久保五段の最近の痛恨事は、第30期新人王戦の準々決勝で蘇耀国七段に敗れたこと。「優勝します!」と宣言し、背水の陣を敷いていたのだが……。ちなみに第26期では準優勝。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】