上達の指南

久保秀夫五段の「ツギ方でわかる棋力」

(4)先手で断点をカバー

(寄稿連載 2005/09/26読売新聞掲載)

 最終回の今回は僕の実戦から題材を取り上げてみることにしました。6月に対局した碁聖戦予選です。

 【テーマ図】 僕の白番で、白46から左下一帯での攻防が焦点となっています。
 黒59のノゾキに白はどう対処すべきかというのが、今回のテーマです。もちろんここを切断されては、いっぺんに勝負は終わってしまいますが、実はこのノゾキを逆手にとる好手があるのでした。

 【1図】 一番普通の白1のツギはどうかということから考え始めます。しかしこれは、黒2と押さえられ、▲と白1の交換は明らかな利かされです。この交換によって白のA方面への進出が不自由となり、この後、白はシノギに汲々(きゅうきゅう)とすることになりそうです。

 【2図】 白1のツケが返し技となります。続いて黒イの出なら、白もロと出て十分以上の形です。

 【3図】 黒は1と押さえるくらいのもので、白は2と切ってサバキの形を求めます。
 実戦は黒3と出たため、白4から8がピッタリとなり、白イの出とロの三々が見合いとなってしまいました。白としては大威張りのサバキで、大成功と言っていい結果となりました。

 【4図】 従って黒3では、黒1の抱えが正着となりますが、白2とノビ込んで、これも白が成功のサバキでしょう。△が効果的な犠打となって、黒イからの切断を防いでいます。

 以上、4週にわたって、石のツギ方に関するお話をしてきました。
 いくらか難しいところもあったかも知れませんが、様々なツギ方がある中で「少しでも働いたツギ方」を心掛けることが、読みの訓練や感性を磨くことにつながり、さらには皆さんの碁を向上させる一助となると確信しています。(おわり)

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】