上達の指南

久保秀夫五段の「ツギ方でわかる棋力」

(3)1、2目の違いにも神経を

(寄稿連載 2005/09/05読売新聞掲載)

 前2回は定石型でのツギ方を問うテーマでしたので、今回は寄せに題材を求めてみました。

 【テーマ図】 イの断点をどうつぐかという問題です。最も得なツギ方を発見してください。

 【1図】 最も単純な黒1の堅ツギですが、白2、4の一線ハネツギを利かされます。このあと黒イ、白ロとして黒白双方の地を計算してみますと、右上の黒地が12目で、右辺の白地が11目。黒としては、これ以上にうまい手があるでしょうか。

 【2図】 黒1のカケツギはどうでしょう? 白イからのハネツギが先手にならないように工夫した手ですが、今度は白2の当てを利かされてしまいます。黒イ、白ロ、黒ハ、白ニとなるものとして計算すると、黒地が12目で白地が11目。1図とまったく同じ結果となりました。

 【3図】 黒1の下がりが、この場合の好手でした。白が2の押さえなら、黒3のカケツギが第2の好手です。黒イ、白ロとして計算すると、黒地が14目で白地が11目。1図や2図と比べて2目の得であることが明白です。
 なお3図の白2で――

 【4図】 白1、3のハネツギなら、ここでも黒4のカケツギが好手となります。イの切りを防ぎつつロの断点をも補い、このあと黒ハ、白ニが先手となるのが自慢です。
 3図よりも黒地は1目減りましたが、白地も1目減っており、やはり1図や2図と比べて2目の得となりました。なお黒4で平凡にイとついでしまうと、白ハ、黒ロとされて1図に戻ってしまうので要注意。

 今回は、寄せで2目得をする問題を取り上げてみましたが、「たかが2目」などとは言わないでくださいね。細かい碁では、この2目が勝敗に直結するのですから。そして、こうした小さな得を積み重ねていけば、それが最終的には10目以上の差となることもあるでしょう。

●メモ● 久保五段は今年7月に行われた高校選手権で審判を務めた。1991年度のチャンピオンという実績もあってのことだが、現役高校生たちの真摯(しんし)な姿に打たれ、自身も大いに気持ちを引き締めていた。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】