上達の指南

黒瀧正憲七段の「ひとケタ級への道」

(2)中央に進出し相手を裂く

(寄稿連載 2008/10/20読売新聞掲載)

 9子局を題材に、初心者の方が陥りやすい失敗を取り上げています。

 【テーマ図】 白1に黒2、白3に黒4もしくはAといった具合に、相手が離して打ってきたら自分も離して打つ――これが前回のテーマでした。
 となると当然、白は5と両掛かりしてくるわけで、ここでの黒の対応が今回のテーマです。

 【1図】 両掛かりされると「▲が取られてしまいそう」という被害意識が働いてしまうのでしょうね。黒1、3と隅で地を持って生きようとする人が非常に多い。というよりも碁を覚えたての人は、ほぼ間違いなくこう打ってきます。

 しかし白6と左下を割られ、この後は■の1子が大きく取られてしまうという負けパターンが待っています。隅にこもる悪手の典型でした。

 【2図】 黒1のツケも問題手。やはり初心者に共通する、くっつけたがる悪癖ですね。白8まで相手を強化することで相対的に▲が弱体化、全局に悪影響が及びます。

 【3図】 黒1と、中央に進出する手が正解です。白2に黒3と頭を出し、自然と△を裂いていることに注目してください。これを私は「相手を二つのグループに分けましょう」という表現で指導していますが、こうした手が打てるようになれば初心者は卒業、ひとケタ級も間近でしょう。

●メモ● 黒瀧七段は小学校6年生の時、全国少年少女大会で優勝し小学生名人となっているが、決勝で破った相手が現在の山下敬吾棋聖(当時小3)だった。負けた山下少年が局後に大泣きしている有名な写真があるが、その脇で申し訳なさそうな顔で立ち尽くしている黒瀧少年の表情もまた印象的。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】