上達の指南
(3)ツケ切り恐れず迎え撃つ
(寄稿連載 2008/10/27読売新聞掲載) プロは指導碁の際、ほんの数手を打ち交わしただけで、した手の力量や傾向を見極めます。
【テーマ図】 白1、3に対し黒2、4と飛んできたら「この人はしっかり勉強しているな」と判断するわけですね。続いて白イなら黒ロと中央に進出しながら白を裂く手がいいというのは前回お話ししたとおりですが、勉強している人はきっちりとそう打ってくるに違いありません。そこで白5とツケる変化球を投じてみることになります。
【1図】 「石がくっついたらハネか伸び」が基本ですが、このケースでの黒1は弱気です。黒11まで隅で地を作ることはできましたが、白に十分以上の厚みを築かせてしまいました。
【2図】 強く黒1とハネたい。白は2と切ってきますが、怖がってはいけません。このようにツケ切られた際の考え方のポイントは「どちらの石が大事か」ということ。黒1と▲のどちらが大切かということですね。
【3図】 黒1の伸びは▲が大事と判断した手ですが、白2とシチョウで1子を取られては明らかな失敗です。
【4図】 相手の石数が多い場面でのツケ切りには「大事な石から当たりをしてつぐ」手が有力となります。すなわち黒1、3の当たりから5のツギ。▲は取られても△を取り込み、黒が十分に満足できる分かれです。
●メモ● 黒瀧七段は現在、東京大学で石倉昇九段、梅沢由香里女流棋聖とともに、講師として学生に囲碁を教えている。講義は順調のようで、受講希望者が殺到しているという。この講義の様子や指導のノウハウをまとめた『東大教養囲碁講座 ゼロからわかりやすく』が光文社から出版されている。